「働き方改革」の罰則規定。医師への適用は5年猶予。そこから見える医師の労働環境とは?

「働き方改革」の大きな焦点となっている罰則付き残業規制。原則として年360時間、特例でも年720時間以内として検討している時間外労働時間制限について、医師への適用を5年間猶予する方針との報道がありました。

 

医師の場合、正当な理由がない場合の診療を拒むことが出来ない法律もあり、また患者数や診療時間、症状などはその時々、人それぞれ異なり、医師側でどうこうと調整できるものでもないため、どうしても長時間労働になりがちです。

 

また「働き方改革」は、人口や労働力人口が減少し続ける中で、長時間労働や残業など改善を目指すもので、昨年より政府や、連合、経団連などが会議を開き、計画をまとめています。

 

その中で、時間外労働については、規制の強化を強めるとともに、罰則を強化する方向で議論が進んでいます。3月17日に発表された時間外労働の上限規制等に関する政労使提案によれば、現在週40時間までとなっている時間外労働時間の限度を、特例を除いて月45時間、かつ年350時間までとする方針で議論が進められています。

 

 

これが医師の働く現場で実現できるかというと、現時点では正直無理な話で、5年の猶予というのも納得できる話です。

 

また、これに対し、日本医師会(日医)の横倉義武会長は3月の記者会見で、「医師が労働者なのかと言われると違和感がある。(労働時間に罰則付き上限を設けることに)医師は5年間の猶予をいただいたので、そもそも医師の雇用を労働基準法で規定するのが妥当なのかを抜本的に考えていきたい」と述べられています。

 

 

さらに「医師の長時間労働を是正するためには、医療機関などが医師の採用を増やすことも必要になるため、「検討の場」では医師増員に伴う診療報酬の財源の手当てなども併せて検討すべき」との見解も示しています。確かに医師を増員することで、長時間労働は是正できる可能性はありますが、財源となる診療報酬による手当の増加が可能かというと、かなり厳しいところでしょう。

 

 

また2008年の閣議決定後、医学部の定員も増え、医師の数は徐々に増えてくることも予想されますが、医師の育成にはかなりの時間が必要です。やっと閣議決定後の研修を終える医師が出てくるくらいで、まだまだ医師の数が安定するにも時間がかかるでしょう。

 

さらに診療報酬による手当となる財源を確保出来るかというと、少子高齢化でただでさえ医療費の割合が増えている中、現実的な問題にはなりにくいでしょう。

 

そう考えると、当面どころか5年後以降も今と変わらない状況、もしくは横倉義武会長の「医師が労働者なのかと言われると違和感がある。」との言葉にある通り、一般労働者とは区別されることになるかもしれません。そうなれば、長時間労働がまかり通ってしまう状況になることだって考えられるわけです。

 

 

今後、2008年の閣議決定後に育った医師が現場に出てくることで、徐々に医師の数も増えてくるとは思いますが、だからこそ今のうちに働きやすい環境を見つけていくことが必要なのかもしれません。