新型コロナウイルス感染拡大により医師の転職市場が変わってきている

2020年は新型コロナウイルス感染拡大により、あらゆる産業・業界に大きな影響、打撃を与えました。

 

特に医療業界は、外来患者や入院患者の減少等による病院の経営状況が悪化しただけでなく、感染患者の受け入れに伴う医師や看護師をはじめとする医療スタッフの疲弊、また受け入れに伴う風評被害等で、他の産業業界と比べて大きなダメージを受けています。

 

これまで、新型コロナウイルス感染が拡大するまでは、医師や薬剤師・看護師等の医療従事者の転職市場は、他業界と比べ、比較的売り手市場で転職もしやすい環境となっていました。

 

しかし、新型コロナウイルス感染拡大により、外来患者・入院患者数が減少したことで、医療機関に入ってくる診療報酬も激減。そのため、医療機関による人員確保のための積極的な採用が出来なくなり求人もは減少。反対に病院経営の悪化、勤務先の先行き不安による転職希望者の増加により、1つの好条件求人への競争が高くなっています。

 

 

実際に、病院経営状況では周知のとおりとなっていますが、2020年6月に日本医師会が発表した「新型コロナウイルス感染症対応下での医業経営状況等アンケート調査(2020 年 3〜4 月分) ※1」によると、2020年4月の入院外総件数が病院・診療所ともに前年比−10%、診療科別では小児科・耳鼻科で大幅に減少となっています。

 

※1 日本医師会「新型コロナウイルス感染症対応下での医業経営状況等アンケート調査(2020 年 3〜4 月分)」

 

 

さらに、2021年2月の四病協による「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査(2020年度第3四半期)※2」では、

 

第3四半期においても前年同期比較で、外来・入院患者数ともに減少
救急車受け入れ件数、手術数も前年と比較し減少したが、緊急手術に関しては前年並
医業利益率が前年同期比1〜3ポイント低下
という内容が発表されました。

 

※2「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査(2020年度第3四半期)」

 

 

第3四半期でも前年同期比で、病床利用率は3ポイント以上の減少。特にコロナ患者受け入れ病院での下げ幅は大きく、4月から12月までの9か月間の医業利益も-4.6ポイントという状況で、ずっと前年を下回る状況になってしまっています。

医療機関の経営悪化で給与もダウン

病院経営の悪化は、そこで働く医療スタッフの給与にも影響を及ぼしています。

 

2020年の冬の賞与は「減額された」、または「賞与が出なかった」という話も聞かれました。

 

日本医療労働組合連合会(医労連)は2020年11月に、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、医療機関の4割超が年末賞与を昨冬より引き下げたとする調査結果を公表しました。医労連によると、2020年の夏季賞与を減額とした医療機関は全体の3割を上回っており、夏季より一段と厳しくなっていることが明らかになりました。原因は新型コロナへの感染を恐れた患者が通院や入院を敬遠する状況が続いているためです。

 

 

2021年2月から先進国の中では最も遅れて、医療従事者からワクチン接種も始まりましたが、国民で希望者への接種が完了するには、大阪府でも希望者には2021年10月までの接種完了を目標としており、国内全域で考えれば2021年中に完了出来るかどうかも怪しいところです。大阪府「新型コロナワクチンに係る検討状況等」

 

 

このように考えると、2021年中に新規患者数・新規入院患者数が以前のように回復するとは考えにくく、2021年も医療機関の経営状況は厳しい状況になるのは容易に想像できます。

 

また医療業界以外でも経済状況は厳しくなっており、経済情勢の悪化は国の税収面でも減収に繋がり、減収となれば社会保障費、診療報酬の抑制に繋がっていくことも十分に想定しなくてはいけません。

 

 

そうなれば、ますます医療機関の経営は2021年も厳しくなるでしょう。そしてこのような状況では医師をはじめとする医療スタッフの中で転職を考える人が増えるのも当然のことです。
中には経営が成り立たなくなる医療機関も出てくることや、統廃合や吸収合併などといった医療機関の再編なども出てくる可能性もあるのです。

 

だからこそ、現在勤務している医療機関の先行きだったり、医師として自分が考えるスキルアップが出来るかどうかを早めに考え、転職を検討するのであれば少しでも早く動き始めたほうが良いでしょう。

2020年から転職を考える医師が急増

当サイトの医師転職ランキングのトップに掲載している医師転職ドットコムを運営するメディウェルによると、新型コロナウイルス感染拡大の長期化により、医師の3人に一人が年収が下がったという調査も出てくるようになりました。(参考:医師紹介転職研究所

 

収入が下がってきたこと、また病院経営の悪化により、転職を考える医師も増えてきています。すでにある医師専門の人材紹介大手では、転職サービスを申し込んだ医師が増加しています。

 

Dr.転職なびを提供する株式会社エムステージでは、2020年の夏までで転職サービスを申し込んだ医師が前年比160%〜180%、他の医師専門の転職サービスを提供する企業でも医師の転職支援サービスの申し込みは増加しているそうです。

 

参考:エムステージ

 

しかし、医師の登録では増えたものの、反対に求人は増えるどころか減少し、競争が激しくなっているのです。
これまでもお伝えした通り、病院経営はどこもひっ迫してきているです。年収が下がったり賞与が出せなくなったりしている中、採用するための費用を確保できにくくなっていることがあります。また採用する予算があったとしても、転職を考える医師が増えているため、医療機関側も慎重に良い人材を採用する動きが出てきています。従来であれば専門医を持っているだけでも歓迎されていたのが、経歴や技術だけでなく、患者に対する対応力だったり、周りの医療スタッフに対する対応などの人物面までも選考基準にしっかり組み込み、採用するようになってきているのです。

 

こういった理由から「転職を考えるのはもう少し先が良いか」と考えてしまいそうですが、そうでもありません。

 

今、求人を転職サイトで出している病院というのは経営面は以前より悪化しているかもしれませんが、「今だからこそ良い医師が採用できる」、「これから良い医療サービスを提供していきたい」と考える、未来に投資が出来る医療機関であったりもするのです。

 

転職を考える条件にマッチする求人が増えてくるのを待っていても、既に多くの医師が転職に向けて動き出しており、先に動き始めている医師に求人がとられてしまう可能性もあります。少し長期的な視点で、マッチする求人を探していくことがこれからの医師の転職には必要になってくるでしょう。