新型コロナで医師の転職条件、転職傾向も変わってきている
新型コロナウイルス感染拡大により、転職を考える医師が増えてきましたが、転職する際の条件にも変化がみられています。
その大きな変化がみられている条件とは、「勤務地」です。医師が転職する際は、昔は医師を採用する際に利用する手段として最も多いのが医局からの紹介、次いで医師専門の転職サイトを運営する転職エージェントとなっていました。
現在では医師の民間への転職も一般的になってきましたが、依然、医局の影響力というのは強いものです。
そのため、親の介護や子どものことなど、仕事というより家庭のことが要因で転職する場合をのぞき、同じ県内や近隣県の病院への転職は大学の医局人事の関係や人間関係などを考慮し、圏内や近隣県への転職を敬遠する医師も多く見られました。そのため遠く離れた病院に転職する医師というのも多く、特に大学病院や40代以上のある程度キャリアや実績を積んだ医師にその傾向がみられました。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大により、遠方、特に地方から関東や関西など大都市圏への転職となると、感染リスクなどを考え家族の反対なども出てきて、これまで避けてきた近隣での転職を考える医師も増えてきているようです。
さらに40代以上のキャリアや実績のある医師は、これまで学会だったり会合など、あちこちから声がかかっていたため、わざわざ転職エージェントを頼らなくても転職できる状態にありました。
これが新型コロナウイルス感染拡大により、軒並み中止となっただけでなく、行か全体で病院経営が悪化し、求人も減ってきているとなると、声がかかるのを待っていてもしょうがないと、キャリアのある医師が積極的に転職サイトを利用するようになってきているのです。
今後淘汰される医療機関が増えてくる
c タイトル:ブラックジャックによろしく 著作者名: 佐藤秀峰 サイト名: 漫画 on web URL: https://mangaonweb.com/
2020年から医師の転職希望者が増加してきたことはこれまでも記載してきましたが、いま、医師が転職を急ごうとするのは新型コロナウイルスだけではありません。厚生労働省では、数年前から医療提供体制の見直しを行っています。「地域医療構想」とも言われているものです。 参照:厚生労働省「地域医療構想想定ガイドライン」
内容は結論から言ってしまえば、地域医療の「最適化」です。これは都道府県(あるいは二次医療圏)ごとに、将来、必要病床数に近づけるための取り組み方法について書かれています。
「少子高齢化」や「人口減少」といった日本が抱える問題は、誰もが知っていることですが、これは社会保障費の拡大と日本の財政赤字にも繋がっています。そのため、団塊世代が75歳以上となる2025年をめどに、各都道府県の医療ニーズを実情に合った医療提供体制に再構築できるよう地域医療構想を進めています。数年前から医療機関の統廃合だったり病床機能再編が加速しているのも、この地域医療構想を受けた流れと考えてよいでしょう。
「実情に合った医療提供体制の提供」、「最適化」と言えば聞こえは良さそうですが、これは医療機関の生き残りをかけた戦いを意味します。
平成26年6月に成立した「医療介護総合確保推進法」によって、都道府県は、地域における効率的・効果的な医療提供体制を確保するために、将来のあるべき姿を示す「地域医療構想(ビジョン)」を医療計画において策定することが定められました。都道府県ごとに二次医療圏単位まで地域医療構想を策定します。データや推計するためのツールは、厚労省から提供されることになっています。
2015年時点で療養病床数は34万床(介護療養7万床、医療療養27万床)となっていたものが、2025年までに20万床までの削減を達成させると定められているのです。また療養病床の地域差と同様に、在宅医療の普及にも各都道府県が推進に取り組むよう強調しています。積極的に推進した場合には、地域医療総合確保基金がより手厚く配分されることなども盛り込まれています。
そのため、数年前から、病院の統廃合や病床機能再編が加速してきました。近隣の医療機関が、医療法人グループに入ったり、買収されたなどのM&Aの話を耳にした方も多いのではないでしょうか?この動きは国が主導で動いているため、今後変わることがないばかりか、今回の新型コロナウイルス感染拡大により加速的に進むと予想する方もいます。
世の中は新型コロナウイルス感染で右往左往していますが、医療を取り巻く環境は、新型コロナウイルスだけでなく、国策によっても大きく変化していくことが求められているのです。
今後、益々医療機関の統廃合は進んでいきます。自分自身が統廃合で吸収する側の医療機関にいるのであればともかく、反対に吸収される側になった時、そのまま耐えていくことが出来るのか。吸収される側になると、どの世界でもそうですが、冷や飯を食わされたり、いくら実力があっても、なかなか上に上がれないなどのジレンマに苛まれることだってあります。
これから2025年まであと4年しかありません。これからの医師としてのキャリアをどのように考えていくのか、またどのような生活を送っていくのか。早めに考え、行動に移していくことも必要でしょう。