医療現場での過重労働は依然解消されていない

医療現場も新型コロナウイルスの感染拡大による影響も大きくなっています。感染者を受け入れている医療機関に限らず、医療機関全体で受診者数が大きく減少し、医療機関の経営も厳しくなっています。経営が厳しくなると十分な人員確保のために費用が回せなくなり、医師・看護師を始めとする医療従事者一人ひとりへの負担も大きくなっていっています。

 

既に大阪ではコロナ感染者を受け入れていた医療法人が民事再生法を申請。「コロナ患者受け入れにより外来患者が減った」とか、「過去の設備投資が重しとなった」等といった報道も出ているようですが、いずれにしても感染者が増えたことで医療機関の収益を圧迫していることに変わりはないでしょう。

 

※1 日本医師会「新型コロナウイルス感染症対応下での医業経営状況等アンケート調査(2020 年 3〜4 月分)」

 

日本医療労働組合連合会が2019年に発表した「2019年秋・退勤時間調査」によると、「働き方改革」と言われている中、医療現場では始業時間前も就業時間後どちらの残業も減らないどころか増加している実態も明らかになっています。
日本医労連「2019 年秋・退勤時間調査」結果の概要

 

さらに、この調査書によると

厚生労働省は、「医師の働き方改革に関する検討会」が2019年に取りまとめた報告書によると、勤務医の時間外労働上限を年960時間(A 水準)、「地域医療暫定特例水準」(B 水準)と「集中的技能向上水準」(C 水準)を年1860 時間とし、労働基準法施行規則に明記して 2024年4月から適用するとしました。

 

B 水準については、2035年度末の廃止を検討するとして、「医療計画の策定または変更のサイクルに合わせ、3年ごとに段階的な見直しを行う」とし、2027年度、2030年度、2033年度に合わせて検討することになっています。
「1860時間」を 1カ月に換算すると155時間となります。これは、過労死ラインとされる「平均80時間」の約2倍であり、異常な長時間労働を固定化するものです。

 

一方で、医師や医療団体などが強く求める医師の増員についてはいっさいふれていません。「地域医療暫定特例水準」(B 水準)を認める代わりに「健康確保措置」として、
@勤務間に 9時間の休息を確保(勤務間インターバル)し、連続勤務は 28時間までとする
A月100時間以上となる前に医師の面接指導を受けるとしています。
しかし、連続勤務や勤務間インターバルが実施できない場合には、翌月までに「代償休息」を付与すればよいとしており、「抜け穴」となりかねない内容です。

 

と、医師の労働環境の改善がすぐに見直されるものではないと問題提起しています。

 

ましてや、2020年からの新柄コロナウイルス感染拡大に伴い、感染者を受け入れている医療機関にとっては医師・看護師ともに労働環境は大幅に悪化しています。ワクチン接種が進みつつありますが、大都市圏を中心に全国でデルタ株が猛威を振るい感染者が急増し、医療関係者の労働環境はさらに厳しくなっている状況です。

 

ワクチン接種が進むことで重症化する患者数は減ってくると思われますが、それでも今の状況だと感染者が大幅に少なくならない限り、外来含め患者数が少なくなり、医療機関の収益も厳しい状況が続き、人件費削減のためギリギリのスタッフで日々の診療を回していかないといけない状況は続いていくでしょう。そうなると労働環境が要因で感染者を受け入れていない病院への転職を考える医師や看護師が増えていくのもやむを得ない事のように思えます。